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精神障害にも対応した地域包括ケアシステム

精神障害の有無や程度にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らせる地域をつくるため市町村を中心として構築される「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」について解説しています。

 

精神障害にも対応した地域包括ケアシステムとは

「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」は、「にも包括」という略称で呼ばれています。「にも包括」は、精神障害の有無にかかわらず、誰もが安心して自分らしく暮らすことができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労など)、地域の助け合い、普及啓発(教育など)が包括的に確保されたものとされています。


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「にも包括」は、なぜ「精神障害に」ではなく、「精神障害にも」なのでしょうか。本来であれば、「包括ケア」には精神障害者のケアやメンタルヘルスケアも含まれているべきですので、わざわざ「精神障害にも」といわなくてもいいはずです。ですが、今の法律や制度では、精神保健や精神医療の施策が必ずしも地域保健法や社会福祉法、医療法などに規定される各種施策と一体となっていないという現状があります。この状況を改善し、地域の各種施策で精神的不調や精神障害を抱えた方を別扱いすることなく、精神障害「にも」対応していくことが重要です。このため、少し回りくどい、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」という名称になりました。
地域の包括ケアシステムは、本来ひとつだけのはずで、精神障害に対応したシステム、子育て支援に対応したシステム、高齢者に対応したシステム、というように、ひとつの地域の中にそれぞれのニーズや障害に特異的に対応した複数の包括ケアシステムを構築しようとしているのではない、ということことです。将来的には、「精神障害にも」とわざわざ言わなくても、精神保健医療福祉上のニーズに当たり前に対応する地域となることを目指しているということです。
 

「にも包括」の構成要素

「にも包括」の構成要素は、以下の通りです。

  • 地域精神保健及び障害福祉
    市町村における精神保健に関する相談支援の充実
    長期在院者への支援について、市町村が病院を訪問し利用可能な制度の説明等を行う取組を制度上位置付ける
  • 精神医療の提供体制
    精神科救急医療体制整備をはじめとする精神症状の急性増悪や精神疾患の急性発症等への対応、危機的な状況に陥る前の段階における対応の充実
    精神科医療機関においては、①ケースマネジメントを含む、いわゆる「かかりつけ精神科医」機能を果たすこと、②地域精神医療における役割を果たすこと、③精神科救急医療体制に参画すること、④精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に資する拠点機能を果たすこと
  • 住まいの確保と居住支援
    生活全体を支援するという考えである「居住支援」の観点を持つこと
    入居者及び居住支援関係者の安心の確保
    協議の場や居住支援協議会を通じた居住支援関係者との連携強化
  • 社会参加
    社会的な孤立を予防するための支援体制を構築する
    地域住民との交流促進や地域で「はたらく」ことの支援
  • 当事者・ピアサポーター
    ピアサポーターによる支援の充実
    市町村等はピアサポーターや当事者等の協議の場への参画を推進する
  • 精神障害者の家族
    家族が必要な時に適切な支援を受けられる体制
    市町村等は協議の場に家族の参画を推進し、わかりやすい相談窓口の設置等に取り組む
  • 人材育成
    「本人の困りごと等」への相談指導等や、伴走支援を行うことができる人材及び地域課題の解決に向けて関係者との連携を担う人材の育成と確保

「にも包括」の構築は、住民にとって最も身近な自治体である市町村などの基礎自治体を基盤として進められます。
市町村には既に母子保健、教育、障害福祉、高齢者支援など、ライフステージや支援ニーズに応じた支援の枠組みがあります。このような支援基盤に精神保健の視点が入ることにより、住民の幅広い支援ニーズに適切な対応ができることが期待されます。
しかしながら、現状では、多くの市町村は慢性的な人手不足であり、精神保健に関する相談支援に困難を抱えているという現状もあります。地域事情に応じて、保健所や精神保健福祉センター、医療機関などが市町村と協働して支援を行うことが大切です。
 

関連リンク
「精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築に係る検討会」報告書
精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築支援情報ポータル