統合失調症
「統合失調症」とは
統合失調症は、こころや考えがまとまりづらくなってしまう病気です。そのため気分や行動、人間関係などに影響が出てきます。統合失調症には、健康なときにはなかった状態が表れる陽性症状と、健康なときにあったものが失われる陰性症状があります。 陽性症状の典型は、幻覚と妄想です。幻覚の中でも、周りの人には聞こえない声が聞こえる幻聴が多くみられます。陰性症状は、意欲の低下、感情表現が少なくなるなどがあります。 周囲から見ると、独り言を言っている、実際はないのに悪口を言われたなどの被害を訴える、話がまとまらず支離滅裂になる、人と関わらず一人でいることが多いなどのサインとして表れます。早く治療を始めるほど、回復も早いといわれていますので、周囲が様子に気づいたときは早めに専門機関に相談してみましょう。
統合失調症の特徴
脳の様々な働きをまとめることが難しくなる病気です
統合失調症は、脳の様々な働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。ほかの慢性の病気と同じように長い経過をたどりやすいですが、新しい薬や治療法の開発が進んだことにより、多くの患者さんが長期的な回復を期待できるようになっています。
幻覚や妄想が特徴的な症状です
統合失調症の症状でよく知られているのが、「幻覚」と「妄想」です。
幻覚とは実際にはないものをあるように感じる知覚の異常で、中でも自分の悪口やうわさなどが聞こえてくる幻聴は、しばしば見られる症状です。
妄想とは明らかに誤った内容を信じてしまい、周りが訂正しようとしても受け入れられない考えのことで、いやがらせをされているといった被害妄想、テレビやネットが自分に関する情報を流していると思い込んだりする関係妄想などがあります。
こうした幻覚や妄想は、本人にはまるで現実であるように感じられるので、病気が原因にあるとはなかなか気づくことができません。
発症の原因は今のところ分かっていません
発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、統合失調症になりやすい要因をいくつかもっている人が、仕事や人間関係のストレス、就職や結婚など人生の転機で感じる緊張などがきっかけとなり、発症するのではないかと考えられています。
100人に1人弱がかかる病気です
日本での統合失調症の患者数は約80万人といわれています。また、世界各国の報告をまとめると、生涯のうちに統合失調症を発症する人は全体の人口の0.7%と推計されます。100人に1人弱。決して少なくない数字です。それだけ、統合失調症は身近な病気といえます。
気長に病気とつきあっていくことが大切です
治療によって急性期の激しい症状が治まると、その後は回復期となり、徐々に長期安定にいたるというのが一般的な経過です。なかにはまったく症状が出なくなる人もいますが、症状がなくなったからといって自分だけの判断で薬をやめてしまうと、しばらくして再発してしまうことも多いので注意が必要です。主治医と相談することが大切です。統合失調症も糖尿病や高血圧などの生活習慣病と同じで、症状が出ないように必要な薬を続けながら、気長に病気を管理していくことが大切です。
統合失調症のサイン・症状
確かに聞こえている、見えているのに、周りの人が否定する
統合失調症で多く現れる症状は幻覚や妄想です。幻覚とは実際にはないものが感覚として感じられることです。とてもはっきりと聞こえたり見えたりするために、脳の中だけで起きているとは考えにくいものです。
妄想とは、明らかに間違った内容を信じてしまい、周りの人たちが訂正しようとしても自分では受け入れられない考えのことです。自分には聞こえたり、見えたりするのに、家族や友達、同僚、上司、医師などの周りの人たちが皆「そんなことはない」と否定するときには、幻覚や妄想の可能性があります。
周囲の人にもわかる統合失調症のサイン
統合失調症に多い幻覚や妄想の症状は、本人には現実味があってそれが病的な症状だとは気づきにくいものです。周りの人が気づくことが、早期発見の第一歩となります。家族や周囲の方に以下のようなサインがあることに気づいた時には、相談窓口などに相談してみて下さい。
幻覚や妄想のサイン
- いつも不安そうで、緊張している
- 悪口をいわれた、いじめを受けたと訴えるが、現実には何も起きていない
- 監視や盗聴を受けていると言うので調べたが、何も見つけられない
- ぶつぶつと独り言を言っている
- にやにや笑うことが多い
- 命令する声が聞こえると言う
そのほかのサイン
認知機能の障害
- 日常生活における理解力が低下したり、記憶力が低下して、社会生活における問題解決能力が低下します。
会話や行動の障害
- 話にまとまりがなく、何が言いたいのかわからない・相手の話の内容がつかめない
- 作業のミスが多い
意欲の障害
- 打ち込んできた趣味、楽しみにしていたことに興味を示さなくなった
- 人づきあいを避けて、引きこもるようになった
- 何もせずにゴロゴロしている
- 身なりにまったくかまわなくなり、入浴もしない
感情の障害
- 感情の動きが少なくなる
- 他人の感情や表情についての理解が苦手になる
統合失調症の治療・支援
統合失調症の治療は、医師との治療関係を構築し、症状を緩和し、機能を回復することを目指します。そのためには、当事者を中心にして家族、支援者、医療者をはじめとした多職種が協力して、生物学的治療と心理社会的治療、精神科リハビリテーションなどの様々な技法や制度を幅広く取り入れて包括的に治療を行います。
治療の目標
- 医師との治療関係の構築
- 精神症状の緩和
- 機能の回復
- 回復後は再発しないように維持
治療関係の構築
初診、入院、転医など担当医が変わるときには、ともに治療に向き合う姿勢をもち、診断と治療を見直して、治療計画を立て直します。
治療の方法
生物学的治療と心理社会的治療は車の両輪のようにどちらも重要で、組み合わせて行なわれます。
生物学的治療
おもに使われる薬
- 抗精神病薬(中心となる症状を抑える)
場合によっては補助的に使われることがある薬
- 抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、気分安定薬 (中心となる症状への効果は期待されていない)
薬はいつまで続けるのか
- 薬をいつまで続けるのかは、個人差があり一口にはいえません。症状の安定をみながら、減量や増量を行い調整していきますが、その判断は専門医でなくては難しいものです。
再発を繰り返すことが多い疾患なので、しばらく症状が安定しているからといって自己判断で薬の量を減らしたり中止したりすることは、再発を誘発して重症化の危険を高めます。「副作用がつらい」「薬をやめたい、減らしたい」などの悩みがあれば、医師に相談しましょう。
時に電気けいれん療法も使われます
心理社会的な治療
病気の自己管理の方法を身につけたり、社会生活機能のレベル低下を防ぐ訓練などを行うもので、精神療法やリハビリテーションが含まれます。就労支援などの社会的サポートも重要です。病状や生活の状態に合わせて、様々な方法が用いられます。
(例)
- 心理教育
病気や治療に関する知識を身につけて、対処法を学ぶ - 生活技能訓練(SST)
ロールプレイ等を通じて、社会生活や対人関係のスキルを回復する訓練を行う - 作業療法
園芸、料理、木工などの軽作業を通じて、生活機能の回復を目指す - 認知矯正療法
認知課題とそれを日常生活に橋渡しする言語セッションを行い、社会機能の回復を目指す - 就労支援
援助付き雇用プログラムなど、当事者毎の個別のニーズを踏まえて包括的な支援を行う