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こころの病気を知る

摂食障害

「摂食障害」とは

食事の量や食べ方など、食事に関連した行動の異常が続き、体重や体型のとらえ方などを中心に、心と体の両方に影響が及ぶ病気をまとめて摂食障害と呼びます。
 摂食障害では、必要な量の食事を食べられない、自分ではコントロールできずに食べ過ぎる、いったん飲み込んだ食べ物を意図的に吐いてしまうなど、患者さんによってさまざまな症状があります。
 症状の内容によって、摂食障害は細かく分類されます。代表的な病気に神経性やせ症、神経性過食症、過食性障害があります。
 

摂食障害の特徴

摂食障害は10代から20代の若者がかかることが多く、女性の割合が高いのですが、年令、性別、社会的、文化的背景を問わず誰でもかかりうる病気です。
日本で医療機関を受診している摂食障害患者は1年間に21~24万人とされています。さらに、複数の調査において、治療を受けたことがない方や、治療を中断している方が4割ほどいることがわかっており、治療が必要な患者数は40万人近くいると考えられています。
摂食障害にかかると、心身の成長・発達と健康、人との関係、日常生活や、学業、職業などの社会生活に深刻な影響をあたえます。やせや栄養障害、嘔吐などの症状によって、身体の合併症を来し、時には生命の危険がある場合もあります。また、別の精神障害(発達障害、依存症)、精神症状(不安、強迫、うつなど)をともなうこともあります。更に、インスリン治療が必須な1型糖尿病に合併しているケースもあるので、注意が必要です。
摂食障害の影響が大きく、長くならないうちに、摂食障害のサインや症状に気づいたら、できるだけ早く専門家に相談して治療を受けることが大切です。
 

摂食障害のサイン・症状

摂食障害の一般的な症状を示します。(患者では、この中のいくつかがあてはまりますが、必ずしも全てにあてはまるわけではありません)

食べることに関する症状

  • 絶食する、食事の量やカロリーを制限する、食べることが難しい、食欲がない
  • 大量に食べてしまい自分ではコントロールできない
  • 食べたものを自分で嘔吐する
  • 下剤を決められた量以上に使ってしまう
  • 利尿剤ややせ薬を使ってしまう
  • 過剰に運動してしまう
  • (1型糖尿病に合併する場合)必要なインスリンを使わない
 

体重や体形、食事への不安

  • 体重や体形への不満がある
  • 周囲からはひどくやせていると言われるが、自分では、ちょうどいい、あるいは太っていると感じる
  • 強いやせ願望、あるいは体重が増えることへの恐怖がある
  • 食べ物のことが頭から離れない
 

こころの症状

  • 自尊心が低い
  • 精神的な苦痛がある
  • 抑うつ気分/不安/気分の変化が大きい
  • 性欲が低下している
  • 周りの人は心配するが、自分が病気とは思っていない
  • 周囲や社会から孤立している
 

からだの症状

  • さまざまな身体の症状がある(例:疲れやすい、寒がり、胃もたれ、便秘、むくみやすい等)
  • 極端な体重の増加や、減少がある
  • 唾液腺の腫脹、齲歯(嘔吐症状がある場合)
  • 月経が止まる、不規則になる

 

摂食障害の治療・支援

摂食障害は回復することが可能な病気です。摂食障害は、体重や食事、栄養だけの問題ではありません。治療では、こころとからだの両面の問題を扱っていきます。それぞれの患者さんの症状や、症状の重さ、別の病気の有無や、背景の問題などを多面的に評価して、それに応じた治療をしていきます。
一般的に、治療に含まれる内容は以下の通りです。
①治療に向けての信頼関係、協力関係を作ります。
②摂食障害という病気の説明をします。
③回復への動機づけや治療についての説明を行います。
④症状(摂食・行動・身体・心理・社会面)の記録や、モニターをします。
⑤身体管理や、身体の合併症があれば対処・治療をします。
⑥食事・栄養指導や、体重を回復する必要がある場合には再栄養療法を行います。
⑦正常な食習慣を指導します。
⑧心理療法を行います。
⑨他の精神疾患もともなっている場合は対処・治療します。
⑩補助的に薬物療法を行うことがあります。

家族やケア提供者の摂食障害に対する理解と協力があると治療を進めやすくなりますので、家族への説明や支援も行われます。
治療は通常は外来で行いますが、外来治療では体重の回復が難しい場合、著しい低体重や身体合併症がある場合、食事を全くとれない場合、精神的に不安定な場合などは入院で治療することがあります。
心理療法としては、一般的に専門家による支持的精神療法が行われ、より専門的な心理療法としては摂食障害に焦点化された認知行動療法などがあります。