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こころの病気を知る

不安症

不安症とは

不安症とは差し迫った出来事に対する恐怖や、将来に対する不安が過剰となり、行動や社会生活に影響を与える状態が、成人の場合は6ヶ月、子どもの場合は4週間、続いている状態です。恐怖や不安は現実の出来事や、身体疾患、特殊な物質の使用、治療薬、環境刺激などによって生じることがありますが、そのような理由のある恐怖、不安は含めません。また不安とともに、動悸、呼吸困難、震え、発汗などの身体症状が生じることもあります。特にパニック発作と呼ばれるタイプでは、強い不安と共に、こうした身体症状が急激に生じることが特徴です。
 

不安症の特徴(さまざまな不安症)

不安症は特徴に応じていくつかに分類されています。

  • 分離不安とは、アタッチメントを生じている保護者から離れるときに、年齢などを考慮してもなお、不適切なほどに強い不安を感じる状態を指します。多くは子どもに生じますが、大人でも生じることがあります。
  • 選択性緘黙(かんもく)は、特定の人の前では話しができるのですが、他の人々の前で話すことが必要になっても、まったく話せなくなることが特徴です。そのために学業や仕事に支障が生じることが少なくありません。
  • 限局性恐怖症は、特定の人、動物、状況に直面すると強い恐怖を生じ、また直面することへの不安のために、そうした対象や状況を回避するようになる状態です。実際に危険な目にあったという理由があることも、特に目立った理由がないこともあります。その恐怖、回避は、実際の危険に比べて不釣り合いなほどに大きく、生活の支障になっています。
  • 社交不安症は、他の人々の前に出たり、特に話しをしたり、注目され、評価される状況に対して強い不安を感じ、そうした状況を避けるようになります。恥ずかしい、悪く思われている、などと悪い方向に考えてしまうことが多くみられます。親しい人や、自分に関心を持たない他人の前では不安が生じないこともあります。
  • パニック症では、急激な不安と、動悸などの身体症状を伴うパニック発作が突然生じることを繰り返します。そのために行動が制限されたり、また発作が起きるのでは無いかという予期不安が生じ、生活に大きな支障が生じます。なおパニック発作は状況によって予想できるものと、予想できないものがあります。また物質使用や治療薬によって、およびうつ病などの他の精神疾患にともなって生じることもあります。
  • 広場恐怖症では、不安になったときにすぐに逃げ帰れないような、家の外の状況に対する不安があります。広場、公共交通機関、建物の中、1人で外出することなどが含まれます。そのような状況を回避したり、付き添いを必要としたりします。
  • 全般性不安は、はっきりとした対象にではなく、色々なことに対して次々と過剰な不安を生じる状態です。安心できない状態と言ってもよいでしょう。そのために常に落ち着かず、そわそわとし、疲れやすく、いらいらし、集中力が続かなくなります。
  • アルコールやカフェインなどの物質使用、治療薬によって生じる不安もあります。これは物質・医薬品誘発性不安症と呼ばれます。
 

不安症のサイン・症状

人は様々なことで不安になります。不安は決して病気ではありません。むしろ、適切な不安を感じることで、対策をしたり、大きな失敗を避けることができるようになります。しかし不安が強すぎると、その不安を避けるために、現実の生活を制限したり、仕事や勉強ができなくなります。この区別は難しいことも多いのですが、これまでの半年間(大人の場合)を振り返って、過去の自分よりも明らかに不安が増えて自信を失っている、不安を避けるために特定の対象や人、状況を回避することにこだわっている、また生活や行動に影響が出ていると感じた場合には、どうか専門家に相談してください。


不安症の対処方法と治療

はじめに

動悸や呼吸困難があるときには、まずは内科の診察を受けてください。時には甲状腺機能亢進症、不整脈、貧血によって不安が生じることもあります。
 

対処方法

カフェインの取り過ぎに注意して下さい。お酒や煙草に比べると、カフェインのリスクはあまり知られていませんが、カフェインの取り過ぎで不安が悪化することは少なくありませんので、場合によっては少しずつ減らしてみましょう。
こちらのサイトに不安になったときの対処法をまとめていますので、無理のないように、お役立て下さい。  

 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所>コロナ心の支援情報>不安との付き合い方
 https://www.ncnp.go.jp/nimh/behavior/anxiety/index.html

不安になったときには、ネガティブなことを考えたり、体の反応が起きたり、思わず行動が影響されてしまうことも少なくありません。「感情調整」のところに、そのような時に、様々な方法で気持ちを切り替えるヒントをのせています。
呼吸法を行うことは、多くの場合は不安の軽減に有効です。まず呼吸筋をほぐすためのストレッチを行います。そしてゆっくりと息を吐く練習をすることで、不安を和らげることができます。ストレッチを1日1回、呼吸法を1回5分、1日3セット、習慣づけてみましょう。「呼吸法」のところに、実技のビデオを用意してありますので、どうぞご覧ください。
 

治療

  • 認知行動療法

    持続的な不安症の場合は、不安な感情が出たときに、かえってそれを強めてしまうような考えや行動をしていることが多いものです。また不安になった、自分が弱いからだ、不安はどんどん悪くなる、いつまでも続くだろう、などの考えが自動的にわいてきます。そして不安になる状況を避けようとします。
    実は不安は、最初の5分間くらいがもっとも強く、その後は段々と横ばいになったり、軽くなっていきます。ところが不安を避けることに全力を集中していると、こうした自然の回復を体験することができません。
    認知行動療法は、こうしたメカニズムに注目し、不安を悪化させる考えや行動を徐々に修正し、不安をコントロールできるという自信を取り戻すための治療です。薬物療法と同じか、それ以上の効果があることが知られています。不安症のタイプによって様々なやり方がありますが、多くは保健適用になっています。

  • 薬物療法

    SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる、うつ病の薬が多くの不安症に有効であることが分かっています。不安症のタイプと薬の種類には組み合わせがありますので、専門の医師に御相談ください。明日からよくなる、というものではありませんが、続けることによって、不安に対する効果が出てくることは実証されています。
    抗不安薬はすぐに効果が見られますが、続けていると依存を生じることがありますので、注意が必要です。不安を避けることに集中している人が抗不安薬を飲むと、この薬をたえず飲むことで不安を避けようと思いつめることがあります。この薬を使う場合は、上に述べた認知行動療法に基づいた助言、指導を受けながら、思い入れが強くなりすぎないように注意する必要があります。